「The Fives」特集！ - BOOGIE WOOGIE　VILLAGE

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「The Fives」特集！

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（1922年発行の楽譜）

斎藤圭土がソロ・アルバム「ブギ・ウギ・ファー・イースト」で取り上げたことから、ごく一部で（笑）大いに盛り上がっている古い古い楽曲「The Fives」。
原曲はハーサル・トーマス（Hersal Thomas)という1906年生まれの黒人ピアニストのもの。

（上の写真左がハーサル。右のウクレレを持っているのは兄ジョージ。）

ハーサルの作ったこの曲はブギ・ウギが全盛になる少し前の曲で、ブギ・ウギというよりブルースに近いかもしれません。
しかし、ハーサルの左手パターンは明らかにプレ・ブギ・ウギ的な躍動感があふれており、最初期のブギ・ウギ・ピアノの（まだブギ・ウギという言葉が定着する前の）重な記録といって良いと思います。
アルバート・アモンズもミード・ルクス・ルイスもハーサルの演奏を実際に聴いて大きな影響を受けています。

ハーサル・トーマスは1906年テキサス生まれ、兄は音楽出版社を経営、姉は当店でも大プッシュのシッピー・ウォレス。小さい頃からテキサスの酒場でピアノの腕前で頭角を表し、前途洋々に見えたがわずか20才で中毒死。

「The Fives」の曲名について少し。
The Fiveとは当時の特急列車(SL)の名前で、危篤の母親の元へハーサルが駆けつける時にこの列車に乗ったことから楽曲が生まれたという逸話があります。
そんな不安な心理状態で作られたはずの曲なのに、決して重くも暗くもなく列車の走る様子がありありと目に浮かぶ軽快な印象。ここが面白いですね。

ハーサル・トーマスの名前はよほどのマニアでないと知らないはずですし、彼の演奏を聴けるCDもごく僅か。
こんなレアな貴重曲を現代に蘇らせてくれた斎藤圭土とハーサルに乾杯！

ハーサルの残したもう１曲の重要曲は「スーツケース・ブルース（Suitcase Blues）」。これもアクセルをはじめ興味深いカバー・ヴァージョンがありますので、次回特集への宿題としましょう。

なお、当店でも大好評のオムニバスCD「伝説のブギ・ウギ・ピアノ」に収録されている同名の「ファイヴズ」はターナー・パリッシュというピアニストによる全く別の曲なのでお間違えないよう！実は当店店長も以前混同していたことがあります・・・。その時にご迷惑をおかけした方にはこの場を借りてお詫びいたします。マニアックなミステイク、すみません！

（1920年頃のバレルハウス（安酒場）の様子。）（Special Collections Photograph Archives of the University of Louisville）

というわけで、ここでは「The Fives」が聴けるCDを特集してみました！

☆この特集を記念して斎藤圭土さん本人からこの曲について興味深いコメントをもらいました！☆

「原曲はHersal Thomasの曲ですが、色々なピアニスト達がカヴァーしアレンジしています。
僕が一番参考にしたアレンジはAxel Zwingenberger氏のアレンジです（アルバム「Boogie Back To New York City」より）。
しかし、この曲をカヴァーするにあたって色々な方のアレンジも参考にしました。その中の一つにHenning Pertiet氏のアレンジがありました（アルバム「BOOGIE WOOGIE」より）。
ブギウギピアニスト達はカヴァーするとき、自分なりのアレンジを加えることが多くあります。そのアレンジの違いもブギウギピアノの面白いところです。
例えば、僕のアレンジは電車の疾走感を出すために、テンポを速くしイーブンに近い形で演奏してます。
機会がありましたら是非聴き比べてみてください！」　　

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